日本語をこねくり回す。映画や音楽にケチをつける。変なものを変だと言う。変じゃないものにも変なこと言う。カテゴライズするのは結構だが、複数のかけ離れたジャンルを少しずつかじるような人の立場は。

since apr.01,2005

 
<!>ここでは過去の日付に新しい記事が追加されることが少なからず、というかかなり頻繁にあるので、暇な人は「新着」に騙されないように掘り返してみてね。
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negation ~否定~

当初は「ねがちょん」というタイトルの記事だったけど、それじゃあ何のことだかわからないので、改訂に際して、売れないポップス曲みたいなタイトルにしてみた。「ねがちょん」とは。否定=negation=ねがちょん。「否定」というマイナスイメージの言葉が、一転してポップで軽薄な響きの言葉に。ほら、言葉の「音」(おん)って大事でしょ。真面目にカタカナで表記するなら、「ネゲーション」「ニゲイション」等だが、実に馴染みのない言葉だ。

D島K平氏が某ラジオ番組のオープニングで、「1週間ぶりのご無沙汰です~」と毎週言っていたのはもう7年近く前(04年当時)のことだ。大好きな彼を否定する気は微塵もないが、ちょっと違うよね。今回はそんなテーマです。某人がこのことに頭を悩ませているのを見たので、ちょっと悩んでみた。勝手に引用します。

(「音沙汰なかった」とすべきところを「音沙汰だった」と間違って書いたことに対して)
ひとつに、「音沙汰」と言う言葉を使うとき、私の場合100%「音沙汰ない」という風にnegationとともに使い、その例外がないため「音沙汰」という単語だけで、自分の中で「音沙汰のないこと」を意味した結果、past-tense「-だった」を付ける事で「音沙汰なかった」と言う意味が成立してしまったのだと考えられる。
(piggy bank(http://diary.cgiboy.com/d01/051449/)より)

はたしてこんなことがあり得るのか。あり得ます。たとえば、「きもい」「きしょい」は、「気持ち悪い」「気色悪い」の(?)略された(?)形で、意味の方向を決定している部分を省略してしまってます。「きもちいい」はまあ普通にあるけど、ひとまず置いといて(後述)、「きしょくいい」とはまあたぶん言わないので、「きしょ」だけで「気色が悪い」を十分喚起させ得るわけですかね。わたくしは現代人じゃないのでいまいちこういう現代語の意味・用法・用量を把握していないのですが。

他にも、「何気に」「さり気に」。それぞれ「何気なく」「さり気なく」が変化したもので、思いっきり「ねがちょん」が取れてしまってます。「何気に」は、岩波国語辞典第六版でも触れられています。

なにげ【何気】 『―(も)無い』これといった考えもない。深い考えもない。特に注意せず、関心を示さない。…略…▽これの副詞的用法「何気無く」を「何気に」と言うのは1985年ごろからの誤用。
(岩波国語辞典 第6版 〈横組版〉、1963、2000)

だそうですけど。意外と古くからあるもんだ。1985年と言えば、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だ。お堅いイメージのある岩波さんだけど、この辞書は現代語に強い。例えば、「アウトレット・インストール・うざったい・花粉症・ゲノム・ダウンロード・デリバティブ」(帯より一部抜粋)なんて語が収録されている。「うざったい」の欄に「うざい」が載ってないのが残念ですが。まあそれはいいとして、「何気無く」と「何気に」って、何気に意味が全然違うよね。

何気無くあいつの方を見ると、教科書に顔を突っ伏して思いっきり居眠りしていた。しかも国語の教科書じゃないか。世界史の時間だというのに。いつもそんな調子なのだが、悔しいことにあいつ、何気に成績はいい。」

これはどう説明したらいいのでしょうかね。そう考えると、現代語の世界に完全には踏み込めていないという気がしないでもない。ちなみにこの辞書は、国語辞典なのに横組版!(縦組版もあります)という心意気に打たれて、発売とほぼ同時に買ったもので、別に現代語に期待したわけではない。

で、意味の変化は置いといて、「何気に」は誤用であると断言しているが、こういう現象は新しいものかというと、そうでもないらしい。例えば、「なのめ」という単語を古語辞典で引いてみよう。

なのめ【斜め】 …略…(1)ひととおりだ。平凡だ。ふつうだ。…(2)…いいかげんだ。(3)〔中世以後「なのめならず」の略〕格別だ。
(旺文社 古語辞典[改訂新版]、1960、1988)

もっとわかりやすい、わかりにくい例は、「おぼろけ」だ。

おぼろけ …略…(1)(下に多く打消の語を伴って)なみひととおりのさま。普通。…(2)なみひととおりでないさま。なみたいていでないさま。格別だ。「おぼろけならず」と同じ意で用いる。…
(旺文社 古語辞典[改訂新版]、1960、1988)

どっちだよ!という感じですね、まったく。けど、英語でも、「I don't never ~」と言った場合に、二重否定ではなくて否定を強調している場合もあるので、まあ結局「ねがちょん」なんてそんなものさ、ということでしょうかね。「I don't never want nothing but you.」ですよ。
[2004年3月15日]

--

(当時)出かける前にさらっと書こうと思ったのに、思いがけず長くなってしまって悲しい。長くなりついでに、「何気なく」と「さり気なく」の使い分けを。

「何気なく女子更衣室を覗く」→事故
「さり気なく女子更衣室を覗く」→犯罪

[2004年3月15日]


上で、ひとまず置いとかれてしまった「きもちいい」に関して。H先生が、娘が「きもち・いい」ではなく「きもちい」という語として認識していることを嘆いていたのを思い出します。お風呂上がりに「あ~きもちかった」とか。それはそれとして、「きもちいい」の反意語は「気持ち悪い」であって、「キモイ」と「きもちいい」は相対する語ではない。だから…あれ、それは「キモイ」が成り立つことをフォローしてないぞ。あ、もしかして、

「キモイ」と「きもちい」のそれぞれ使われ得る状況が全くかぶらないというのもあるが、若者的には、「気持ち悪い」という一単語を略して「きもい」、「きもちい」はそれで一単語、だからお互いの立場が干渉し合うことはない、と。これでどうか。…何もそこまで無理してこじつける必要もないのだが。

goo辞書(「大辞林 第二版」及び「デイリー 新語辞典+α」)には、「きもい」も「キショい」も載ってますね。最早「誤用」ではない。そうなってくると、「キモイ」と「気持ち悪い」の明らかな意味的差異が…泥沼化。
[2006年1月14日]

2006/01/14(土)| 日本語| トラ(1) | コメ(0)
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社会人になると、必然的に人間環境とでも言うか周りにいる人間の色やカタチが変わり、そうなるとまた必然的に言語文化も変わるわけですよ。で、最近面白いなぁと思ったことがちら
2006/04/24(月) 22:11:26 | ad_victim
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